「親はまだ元気なので、実家のことを話すのは早い」
このように考えて、実家の相続対策を先送りしているご家庭は少なくありません。
しかし、生前対策は、親が亡くなる直前に慌てて始めるものではありません。親自身が元気で、自分の考えを家族へ伝えられるうちに、住まいや財産の将来について話し合うことが大切です。
国土交通省も、空き家の発生原因の半分以上が相続であり、親が元気なうちに「誰が住むのか」「売るのか」「貸すのか」「解体するのか」などを家族で話し合うことが重要だと案内しています。
今回は、実家を将来の空き家や相続トラブルにしないため、元気なうちに取り組みたい5つの準備をご説明します。
1.土地・建物の名義と権利関係を確認する
最初に確認したいのが、実家の登記名義です。
長年住んでいる家でも、次のようなケースがあります。
- 土地が亡くなった祖父母の名義のまま
- 土地と建物の名義人が異なる
- 兄弟姉妹との共有名義になっている
- 私道や借地権が関係している
- 増築部分が登記されていない
- 住宅ローンや昔の抵当権が残っている
- 隣地との境界が明確でない
名義や権利関係が複雑なまま相続が発生すると、相続人の調査や遺産分割、相続登記、不動産売却に時間がかかる可能性があります。
まずは、法務局で土地・建物の登記事項証明書や公図などを取得し、現在の状況を確認しましょう。
登記申請や具体的な権利関係の整理については、司法書士や土地家屋調査士への確認が必要です。
2.不動産の「現在価値」と「将来の負担」を把握する
固定資産税評価額だけでは、実際に不動産がいくらで売却できるかは分かりません。
生前対策では、次のような情報を整理します。
- 現在の売却査定額
- 土地と建物の状態
- 想定される賃料
- 修繕・リフォーム費用
- 解体費用
- 固定資産税や火災保険
- 庭木、清掃、換気などの管理費用
- 相続後に誰が管理するのか
- 収益不動産の場合は、実際の収支や稼働率
特にアパート、貸家、駐車場などを複数所有している場合、保有していること自体が目的となり、個々の収益性や将来の修繕負担が見えなくなっていることがあります。
相続税評価額が低い不動産でも、収益性や流動性が低ければ、相続した家族の負担になる可能性があります。
反対に、収益性が安定し、将来も管理しやすい不動産であれば、無理に売却する必要はありません。
「残す不動産」と「整理を検討する不動産」を分けるためにも、資産全体を数字で把握することが重要です。
3.実家を将来どうするか、家族で話し合う

親が「子どもの誰かが住むだろう」と考えていても、子ども側には住む予定がないことがあります。
まずは、親と子で次の点を確認しましょう。
- 親はいつまで実家に住みたいのか
- 高齢者施設などへ転居した場合、実家をどうするのか
- 子どもの中に将来住みたい人がいるか
- 誰も住まない場合、売却・賃貸・解体のどれを検討するか
- 家財や仏壇をどうするか
- 維持管理を誰が担当するか
- 実家を取得する相続人と、他の相続人との公平をどう保つか
国土交通省は、住まいに関する情報や将来の希望を書き残すための「住まいのエンディングノート」を公表しています。
話し合いのきっかけとして活用すると、親の希望を一方的に聞くだけでなく、管理を引き継ぐ子ども側の事情も整理しやすくなります。
4.遺言書などで意思を明確にする
家族で話し合っただけでは、実際の相続時に親の希望どおりになるとは限りません。
実家を特定の相続人に取得させたい場合や、不動産と現預金の配分を決めておきたい場合は、遺言書の作成を検討します。
例えば、次のようなご家庭では遺言書の必要性が高くなります。
- 相続人が複数いる
- 自宅を同居している子に残したい
- 前婚の子どもがいる
- 相続人同士が疎遠である
- 財産の多くを不動産が占めている
- 子どもごとに残す財産を指定したい
- 収益不動産を共有にしたくない
自筆証書遺言については、法務局で保管する制度も設けられています。一方、公正証書遺言を利用する方法もあります。
遺言書は、遺留分や財産の評価、納税資金などを考慮せずに作成すると、かえって相続人間の問題を生じさせることがあります。内容は行政書士、弁護士、税理士、司法書士など、必要な専門家と確認しながら検討することが大切です。
5.保有・活用・組み換え・売却を比較する
生前対策は、必ず不動産を売却することではありません。
実家や所有不動産について、主に次の選択肢を比較します。
そのまま保有する
親が引き続き居住する、または将来子どもが住む予定がある場合の選択肢です。維持費や修繕計画、将来の管理者を明確にしておきます。
賃貸などに活用する
賃貸需要、建物の状態、改修費、管理費などを調査し、事業として収支が成り立つか確認します。
資産を組み換える
管理負担や修繕リスクの大きい不動産を整理し、現預金や管理しやすい資産へ組み換える方法です。
収益不動産の場合は、単純な表面利回りだけでなく、空室、修繕、借入金、税金を含めた実質的な収支を確認します。
売却する
家族に利用予定がなく、将来の管理が難しい場合には、親が元気なうちに売却する方法もあります。
ただし、住み替え先、売却後の生活資金、譲渡所得税、諸費用などを考慮しなければなりません。税務上の判断は、売買契約前に税理士や税務署へ確認しましょう。
生前対策は「何をするか」より「現状を知ること」から
生前対策というと、遺言書、生前贈与、家族信託、不動産売却など、具体的な手段から考えがちです。
しかし、家庭環境や資産状況を確認しないまま手段を選ぶと、本来の目的に合わない対策となる可能性があります。
まずは、次の順番で整理することが大切です。
- 家族関係と将来の希望を確認する
- 財産と負債を一覧にする
- 不動産の時価・収益性・管理負担を調査する
- 相続税や納税資金の見込みを確認する
- 遺産分割の方法を比較する
- 必要な対策を選択する
まとめ
実家の相続対策は、親が元気で、家族と話し合えるうちに始めることが理想です。
早い段階で状況を整理すれば、実家を残す、活用する、資産を組み換える、売却するなど、複数の選択肢を比較できます。
船橋・津田沼相続相談センターでは、行政書士としての相続手続きの視点と、不動産コンサルティング・売買実務の視点を組み合わせ、家庭環境と資産状況の整理からお手伝いしています。
売却を前提とするのではなく、まずはご家族の希望、不動産の収益性、将来の管理負担などを確認し、必要に応じて税理士、司法書士、弁護士、土地家屋調査士などの専門家と連携します。
船橋市、習志野市、千葉市周辺で、実家や所有不動産の将来に不安がある方は、問題が起きる前に一度ご相談ください。
※本記事は一般的な制度の説明です。個別の登記は司法書士、税務判断は税理士・税務署、法律上の紛争は弁護士など、各専門家へご確認ください。
