親が亡くなり実家を相続したものの、「思い入れがあって売れない」「将来、誰かが住むかもしれない」と、結論を出せずにいる方は少なくありません。
一方、利用予定のない実家を長期間そのままにすると、固定資産税、火災保険、庭木の手入れ、建物の修繕などの負担が続きます。時間の経過により建物の老朽化が進み、売却や賃貸が難しくなる可能性もあります。
大切なのは、最初から売却ありきで考えるのではなく、家族の意向、建物の状態、維持費、市場価値、税制上の期限を整理したうえで、次の選択肢を比較することです。
- 現状のまま保有する
- 親族が居住する
- 賃貸住宅などとして活用する
- 別の資産へ組み換える
- 売却して現金化する
まず確認したい5つの項目
相続した実家の方向性を決める前に、少なくとも次の項目を確認します。
1.現在の登記名義
2024年4月1日から相続登記が義務化されています。不動産を相続したことを知った日から3年以内に、原則として相続登記を申請する必要があります。
2024年4月1日より前に発生した相続についても対象となり、未登記の場合は原則として2027年3月31日までの対応が必要です。
遺産分割協議がまとまらない場合には、「相続人申告登記」という制度もあります。具体的な登記手続きについては、司法書士や法務局へ確認しましょう。
2.相続人全員の意向
実家を複数の相続人で共有すると、将来の売却や賃貸、建て替えなどを行う際に、共有者間の調整が必要になります。
「長男は残したいが、他の相続人は売りたい」「一人だけが管理を負担している」といった状態が続くと、後から対立が生じることもあります。
不動産そのものの価値だけでなく、管理を誰が担当し、費用を誰が負担するのかまで話し合うことが大切です。
3.建物の状態と不動産の市場価値
実家を残すか売却するかを判断するためには、次の金額を把握する必要があります。
- 現状の売却査定額
- 解体して土地として売却する場合の見込額
- 賃貸する場合の想定賃料
- 修繕・リフォーム費用
- 解体費、測量費、残置物処分費
- 毎年の固定資産税や管理費
例えば、賃貸にすれば収入が得られるとしても、大規模な修繕が必要であれば、必ずしも有利とは限りません。
売却価格だけではなく、「今後いくら費用がかかるのか」まで含めて比較する必要があります。
空き家を放置するリスク
国土交通省は、空き家は放置期間が長くなるほど老朽化や損傷が進み、売却や賃貸が難しくなると案内しています。
また、適切に管理されていない空き家は、市区町村から「管理不全空家」や「特定空家」として指導等の対象になる可能性があります。指導に従わず勧告を受けると、土地の固定資産税等に適用されていた住宅用地特例が受けられなくなる場合もあります。
空き家は、使用していなくても定期的な換気、通水、庭木の剪定、雨漏りや外壁の点検などが必要です。
遠方に住んでいて継続的な管理が難しい場合は、早めに活用や売却を検討することも、資産を守るための選択肢になります。
売却する場合に確認したい「空き家の3,000万円特別控除」
相続した実家を売却する際、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度があります。
ただし、相続した空き家であればすべて利用できるわけではありません。主な要件には、次のようなものがあります。
- 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物、いわゆる分譲マンションなどではないこと
- 原則として相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと
- 家屋とその敷地を相続または遺贈により取得していること
- 相続後、事業・賃貸・居住に使用していないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 2027年12月31日までに売却すること
2024年1月1日以後の売却では、相続または遺贈により取得した相続人が3人以上の場合、控除上限額は2,000万円になります。
また、耐震基準を満たしていない家屋でも、売却した翌年2月15日までに耐震改修または建物の取り壊しが完了すれば、一定の要件のもとで対象になる場合があります。
この特例を利用するためには確定申告が必要であり、所在地の市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などの書類も必要です。
適用の可否は建築時期、利用状況、売却時期、相続人の人数などによって変わるため、売買契約を締結する前に税理士や税務署へ確認することをおすすめします。

「売る・残す」ではなく、資産全体で考える
相続不動産の相談では、「実家を残すか売るか」という二択になりがちです。
しかし、実際には次のような選択肢もあります。
- 実家を売却し、相続人間で現金を分ける
- 売却代金の一部を相続税の納税資金として確保する
- 管理負担の大きい不動産を売却し、管理しやすい資産へ組み換える
- 収益性の低い賃貸物件を整理し、資産全体の収支を改善する
- 家族が利用する予定のある不動産は残し、それ以外を整理する
重要なのは、個々の不動産だけを見るのではなく、相続財産全体の時価、収益性、相続税評価、借入金、将来の管理負担を一覧にして検討することです。
不動産は、相続税評価額と実際の市場価格が同じとは限りません。遺産分割の公平性を考える際にも、税務上の評価と実際に売却できる価格の両方を確認する必要があります。
まとめ|結論を急がず、調査は早めに
相続した実家をすぐに売却する必要があるとは限りません。
しかし、何も決めずに長期間放置すると、建物の老朽化、管理費の増加、税制上の期限、相続人間の意見調整など、解決すべき問題が増える可能性があります。
まずは次の順番で整理しましょう。
- 相続人と登記名義を確認する
- 建物と土地の状態を調査する
- 売却価格・賃料・修繕費・維持費を比較する
- 税制上の期限と適用要件を確認する
- 家族で保有・活用・組み換え・売却を検討する
船橋・津田沼相続相談センターでは、行政書士としての相続手続きの視点と、不動産実務の視点を組み合わせ、相続した不動産の状況を整理しています。
売却を前提とせず、保有、活用、資産の組み換え、売却のメリット・デメリットを比較し、必要に応じて税理士、司法書士、土地家屋調査士などの専門家と連携して対応します。
船橋市、習志野市、千葉市周辺で相続した実家や空き家についてお悩みの方は、早めにご相談ください。
※本記事は一般的な制度の説明です。個別の相続登記は司法書士、税務判断および申告は税理士・税務署、法律上の紛争は弁護士など、それぞれの専門家へご確認ください。
