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配偶者居住権を遺言で準備する前に|自宅と生活資金を両立する相続設計 | 船橋相続相談センター

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配偶者居住権を遺言で準備する前に|自宅と生活資金を両立する相続設計

2026年09月16日

カテゴリ:生前対策

相続財産の多くを自宅が占める場合、配偶者が自宅を取得すると、預貯金を子へ渡す結果となり、配偶者の老後資金が不足することがあります。

反対に、子が自宅を取得すると、配偶者が住み続けられるのか不安が残ります。このような場面で検討できる制度が「配偶者居住権」です。

配偶者居住権を利用すると、自宅の「住む権利」と「所有権」を分け、配偶者が住み続けながら、子など別の相続人が建物と敷地の所有権を取得できます。

ただし、誰にでも有利な制度ではありません。配偶者は自由に売却できず、所有者側も居住権が続く間は不動産の利用や処分に制約を受けます。遺言へ記載する前に、家族関係、生活資金、不動産価値、維持管理、二次相続まで比較する必要があります。

配偶者居住権とは

配偶者居住権は、亡くなった方が所有していた建物に配偶者が相続開始時に居住していた場合、一定の要件の下で終身または一定期間、その建物を無償で使用・収益できる権利です。2020年4月1日から施行されています。

例えば、夫の遺産が自宅5,000万円と預貯金3,000万円、相続人が妻と長男である場合を考えます。妻が自宅の所有権を取得すると、妻が受け取れる預貯金が少なくなる可能性があります。

自宅を「配偶者居住権」と「居住権の負担が付いた所有権」に分ければ、妻が配偶者居住権と一定の預貯金を、長男が負担付きの所有権を取得する分割案を検討できます。

重要なのは、配偶者居住権にも財産価値があり、無価値ではないことです。単に「妻は住むだけ、子が不動産全部を取得する」と考えず、それぞれの価額を確認します。

利用するための主な要件

民法1028条に基づく配偶者居住権を取得するには、主に次の点を確認します。

  • 法律上の配偶者であること
  • 相続開始時に対象建物へ居住していたこと
  • 対象建物が亡くなった方の財産であること
  • 亡くなった方が、配偶者以外の第三者と建物を共有していないこと
  • 遺産分割、遺贈または家庭裁判所の審判等により取得すること

亡くなった方と配偶者が建物を共有していた場合は対象になり得ますが、亡くなった方が兄弟など配偶者以外の人と共有していた建物には設定できません。

また、事実婚のパートナーは民法上の配偶者には当たりません。家族構成、建物と土地の登記名義、居住実態を先に確認しましょう。

遺言で準備する場合の注意点

配偶者居住権は、相続発生後の遺産分割でも設定できます。しかし、子との関係や将来の合意に不安がある場合は、遺言で配偶者へ配偶者居住権を遺贈する方法を検討できます。

「自宅を相続させる」とは意味が異なる

配偶者へ自宅の所有権を取得させる遺言と、配偶者居住権だけを遺贈する遺言は、効果が異なります。

配偶者居住権を選ぶなら、対象となる建物、敷地、権利の存続期間、所有権を取得する人を特定し、相互に矛盾しない遺言にする必要があります。表現によって権利取得や放棄の扱いが変わる可能性があるため、自己流の一文を追加するだけではなく、公証人、行政書士、弁護士、司法書士等と文案を確認します。

所有権を取得する人の理解も必要

子が居住権付きの所有権を取得する場合、配偶者の居住中は自由に使用できません。売却すること自体は可能でも、買主は配偶者居住権の負担を引き継ぐため、買主層と価格が制限される可能性があります。

遺言者の意思だけでなく、配偶者が本当に住み続けたいのか、子が将来どのように不動産を管理するのかを家族で共有しておくことが大切です。

配偶者居住権の期間と登記

配偶者居住権の存続期間は、遺産分割協議や遺言等で別の期間を定めない限り、原則として配偶者の終身です。配偶者が亡くなると権利は消滅し、子などへ相続されません。

第三者との関係で権利を明確にするには設定登記が重要です。法務局は、遺産分割・審判・遺贈など原因別の配偶者居住権設定登記の申請書様式と記載例を公開しています。

居住建物の所有者には、配偶者に登記を備えさせる義務があります。遺言を作成するときは、所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を誰が、どの順序で進めるかも決めておきましょう。

登記申請は司法書士・法務局へ確認してください。

配偶者と所有者の負担を整理する

配偶者居住権を設定すると、配偶者と所有者が別人になります。将来の修繕や費用負担を曖昧にすると、親子間でも意見が分かれます。

通常の必要費と修繕

配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担します。また、建物の修繕が必要な場合、配偶者は自らの費用で修繕できます。配偶者が相当期間内に必要な修繕をしないときは、所有者が修繕できるとされています。

しかし、屋根・外壁・給排水設備など高額な工事について、法的な負担区分だけで家族の納得が得られるとは限りません。固定資産税、火災保険料、日常修繕、大規模修繕、バリアフリー改修の負担方針を事前に話し合います。

増改築や第三者への使用

配偶者は、所有者の承諾なく建物の増改築をしたり、第三者に使用・収益させたりすることはできません。将来、配偶者が施設へ入居して自宅を賃貸したいと考えても、単独では決められない可能性があります。

「終身住める安心」と引き換えに、住み替えや賃貸活用の自由度が下がる点を理解しておきましょう。

相続税評価は所有権と居住権に分かれる

国税庁の配偶者居住権等の評価方法では、建物について配偶者居住権と居住権付き建物の価額を分け、土地について敷地利用権と居住権の負担が付いた敷地の価額を分けて計算します。

評価には、建物の相続税評価額、耐用年数、経過年数、配偶者居住権の存続年数、法定利率による複利現価率などを用います。終身の場合は、配偶者の年齢に応じた平均余命が計算に影響します。

したがって、同じ自宅でも配偶者の年齢、建物の築年数、権利の期間により評価額が変わります。また、相続税評価額と市場価格は同じではありません。

配偶者居住権を設定すれば必ず相続税が少なくなるわけではなく、一次相続と配偶者死亡後の二次相続を通じた税額、生活資金、権利制約を合わせて税理士へ試算を依頼します。

配偶者の税額軽減だけで決めない

相続税には、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかからない配偶者の税額軽減があります。

ただし、一次相続で配偶者へ多くの財産を集めれば、配偶者の死亡時に二次相続の課税財産が増えることがあります。反対に、税額だけを優先して子へ自宅の所有権を移し、配偶者の住み替えや修繕の選択肢を狭めるのも適切とは限りません。

税額の軽減、配偶者の手元資金、子の取得財産、将来の管理負担を一つの表にして比較します。

途中で放棄・合意解除すると贈与税の問題が生じることがある

配偶者が施設へ移る、自宅を売却して住み替えるなど、設定後に配偶者居住権が不要になる場合もあります。

配偶者と所有者の合意や配偶者の放棄によって権利を消滅させ、所有者が対価を支払わないか著しく低い対価しか支払わないときは、権利消滅によって所有者が得た利益を配偶者からの贈与として取り扱う国税庁の取扱いがあります。

配偶者の死亡や設定期間の満了による消滅とは、税務上の扱いが同じとは限りません。途中で権利を消滅させる場合は、合意書を作る前に税理士へ確認してください。

自宅の承継方法を4つ比較する

1.配偶者が自宅の所有権を取得する

配偶者が売却、賃貸、住み替えを自分で判断しやすい方法です。十分な預貯金も取得でき、将来の管理能力に問題がなければ、配偶者居住権より単純で分かりやすい場合があります。

一方、自宅の価値が大きいと子との取得額調整が必要です。二次相続時に再度遺産分割と登記が生じます。

2.配偶者居住権を設定し、子が所有権を取得する

配偶者の居住と生活資金を確保しつつ、所有権を次世代へ移せます。ただし、配偶者と所有者の協力が長期間必要で、売却・賃貸・増改築の自由度は低下します。

3.親子の共有にする

持分で価値を分けられますが、不動産全体の売却や大きな変更には共有者間の調整が必要です。次の相続で共有者が増える可能性も考慮します。

4.売却・住み替えを行う

今の自宅が広すぎる、修繕費が重い、交通や医療の利便性が低い場合には、生前または相続後の売却と住み替えも選択肢です。

ただし、住み慣れた地域との関係、売却税、購入・賃借費、介護環境を確認します。売却を前提にせず、今の自宅を保有する場合とキャッシュフローで比較しましょう。

遺言作成前のチェックリスト

  1. 建物・土地の登記名義と共有者を確認する
  2. 配偶者の居住実態と住み続ける希望を確認する
  3. 自宅の市場価格と相続税評価額を確認する
  4. 預貯金、保険、有価証券、借入れを一覧にする
  5. 配偶者の生活費、医療費、介護費を見積もる
  6. 建物の修繕履歴と今後の工事費を確認する
  7. 配偶者居住権の期間を終身・有期で比較する
  8. 所有権を取得する人と費用負担を話し合う
  9. 自宅取得、居住権、共有、売却・住み替えを比較する
  10. 一次相続と二次相続の税額を税理士へ確認する
  11. 遺言文案、遺言執行、登記手順を専門家と確認する

まとめ|「住めること」と「自由に使えること」は別に考える

配偶者居住権は、配偶者が自宅に住み続けながら生活資金も確保するための有効な選択肢です。一方で、所有権ではないため、売却、賃貸、増改築、住み替えに制約があり、所有者との協力が欠かせません。

節税効果だけで選ばず、配偶者の年齢と希望、建物の将来性、修繕・管理負担、家族関係、二次相続を確認し、自宅の所有権取得や売却・住み替えとも比較することが大切です。

船橋・津田沼相続相談センターでは、代表の高原が、特定行政書士として相続人や財産関係、遺産分割に必要な事項を整理し、必要に応じて税理士・司法書士等の専門家と連携して対応します。

また、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、CPM(米国不動産経営管理士)、CCIM(米国不動産投資顧問)としての専門知識と、不動産会社経営および相続・不動産コンサルティングの実務経験を生かして対応します。単に現在の市場価格を査定するだけでなく、CPM・CCIMの知識と分析手法を用いて、居住価値、売却可能性、キャッシュフロー、修繕・管理負担、住み替え費用、将来性などを分析し、配偶者による所有、配偶者居住権、共有、保有、改善、資産の組み換え、売却の各選択肢を総合的に比較します。

船橋市、習志野市、千葉市周辺で、配偶者が自宅に住み続けるための遺言や不動産承継にお悩みの方は、遺言の文案を作る前に、家族の希望と財産全体を整理してみてはいかがでしょうか。

※本記事は一般的な制度と検討方法を説明するものです。遺言書作成や相続関係書類は行政書士等、法的判断・紛争・遺留分は弁護士、相続税・贈与税の計算と申告は税理士または税務署、配偶者居住権・所有権の登記は司法書士または法務局へご確認ください。

参考資料