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任意後見契約とは?公正証書を作った後に確認したい開始時期と受任者の選び方 | 船橋相続相談センター

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任意後見契約とは?公正証書を作った後に確認したい開始時期と受任者の選び方

2026年09月01日

カテゴリ:生前対策

将来、認知症などで判断能力が低下したときに備え、「財産管理や介護施設との契約を信頼できる人へ任せたい」と考える方が増えています。その方法の一つが任意後見契約です。

任意後見は、元気なうちに自分で支援者と代理してもらう事務を決められる制度です。しかし、公正証書を作成しただけで、直ちに任意後見人が預金管理や不動産売却をできるわけではありません。

契約締結から実際の開始までに空白期間があり、任意後見人には法定後見人と異なる権限上の限界もあります。この記事では、契約前に確認したい仕組み、受任者の選び方、財産管理・遺言との役割分担を整理します。

任意後見契約とは

任意後見制度は、本人が十分な判断能力を有するうちに将来の代理人と委任事項を公正証書で定め、判断能力が不十分になった後に支援を受ける制度です。

契約を結ぶ本人を「委任者」、将来任意後見人になる予定の人を「任意後見受任者」といいます。実際に契約の効力が生じた後は「任意後見人」と呼ばれます。

代理を依頼する内容は、例えば次のような事務です。

  • 預貯金、有価証券、年金等の管理
  • 税金、保険料、医療費、施設費等の支払い
  • 介護・福祉サービスや施設入所の契約
  • 不動産の管理、賃貸借、修繕
  • 必要な範囲での不動産売却
  • 行政機関、金融機関等での手続

何を任せるかは代理権目録に具体的に定めます。「財産のことはすべて任せる」という曖昧な理解ではなく、所有財産と将来の生活を基に必要な権限を検討します。

契約は公正証書で作成する

任意後見契約は、法律上、公証人が作成する公正証書によって締結する必要があります。本人と任意後見受任者が契約内容を検討し、公証人が本人の意思と契約内容を確認して公正証書を作成します。

作成後は任意後見契約の内容が成年後見登記へ記録されます。成年後見登記制度では、任意後見契約の内容や任意後見人等の権限を登記し、登記事項証明書によって証明します

行政書士等が本人の希望、財産、生活上の課題を整理し、公証人へ提出する原案や必要資料の準備を支援することは考えられます。ただし、公正証書そのものは公証人が作成し、登記・税務・紛争性のある法律問題は司法書士、税理士、弁護士等との連携が必要です。

公正証書を作っても直ちに効力は生じない

任意後見契約で特に誤解が多いのが開始時期です。

任意後見契約は、本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます

したがって、公正証書を作成した時点では、任意後見受任者に任意後見契約上の代理権はまだありません。本人の判断能力が十分な間は、原則として本人が自分で財産管理と契約を行います。

判断能力が低下したときは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者等が、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ任意後見監督人選任を申し立てます。

「契約書を作ったから家族がすぐ預金を動かせる」「本人が寝たきりになれば自動的に開始する」という制度ではない点が重要です。

任意後見監督人の役割

任意後見監督人は、任意後見人が契約内容に従って本人のために適切に事務を行っているかを監督し、家庭裁判所へ報告します。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任する際は、本人の心身・財産の状況、本人の意向等を踏まえて判断し、監督人の報酬は家庭裁判所が決定して本人の財産から支払われます

契約時に任意後見監督人を自由に指定して確定できる制度ではありません。任意後見人へ親族を予定していても、監督人には弁護士、司法書士等の専門職が選任されることがあります。

申立てには、任意後見契約公正証書の写し、成年後見登記の証明書、家庭裁判所所定の診断書、財産資料等が必要になります。管轄裁判所の最新案内を確認して準備します。

任意後見人には取消権がない

法定後見と任意後見には権限上の違いがあります。

法務省の制度比較では、任意後見人は任意後見契約で定めた範囲の代理権を持つ一方、本人が行った法律行為を取り消す権限はないとされています。

例えば、判断能力が低下した本人が不利益な契約を結んだ場合でも、任意後見人だからという理由だけで当然に取り消せるわけではありません。

本人の状態や保護の必要性によっては、任意後見だけでは十分でなく、法定後見への移行を検討する場面があります。具体的な契約の有効性や取消しの可否は弁護士等へ確認してください。

任意後見受任者は誰にするか

任意後見受任者には、成人した子、親族、信頼できる第三者、弁護士・司法書士・行政書士等の専門職、一定の法人などが候補になります。

大切なのは、資格名や血縁だけではなく、次の条件を比較することです。

本人の希望と生活を理解しているか

医療、介護、住まい、生活費について本人がどのように暮らしたいかを理解し、本人の意思を尊重できることが基本です。

長期間継続できるか

契約締結から効力発生まで長期間空くことがあります。受任者自身の年齢、健康、居住地、仕事、家族状況を確認します。

財産管理を適切に行えるか

通帳、収支、領収書、不動産、賃貸借契約等を本人の財産と明確に分け、監督人へ説明できる管理体制が必要です。

利益相反が起こらないか

本人の不動産を受任者やその家族が安く買い取る、本人の財産から受任者へ多額の支払いをするなど、本人と受任者の利害が対立する可能性を確認します。

不動産・事業を管理できるか

賃貸物件や会社経営がある場合、単なる支払い代行では足りません。空室、修繕、管理会社、借入、税務、売却判断を適切な専門家と連携して処理できるかを確認します。

親族を任意後見受任者とし、専門家が契約作成や財産管理を支援する方法もあれば、専門職を受任者にする方法もあります。本人の財産規模、家族関係、業務の難しさ、費用から個別に選びます。

契約締結から開始までの空白期間をどうするか

任意後見契約は判断能力低下後の制度です。そのため、判断能力は十分でも、病気や身体機能の低下により銀行や役所へ行けない期間には、任意後見契約だけでは対応できない場合があります。

この空白を補うため、任意後見契約とあわせて財産管理等委任契約を結び、本人が希望する時期から一定の事務を委任する方法があります。本人の見守りや定期連絡について合意することもあります。

ただし、財産管理等委任契約には家庭裁判所が選任した監督人による法定の監督がありません。代理権の範囲、報告方法、通帳・印鑑の保管、報酬、終了事由を明確にし、不正や疑義を防ぐ仕組みが必要です。

遺言書とは役割が異なる

任意後見契約は、本人が生きている間の生活と財産管理を支える制度です。本人が亡くなった後、財産を誰に承継させるかを決める制度ではありません。

そのため、次のように役割を分けて考えます。

  • 任意後見契約:判断能力低下後の本人の生活・財産管理
  • 財産管理等委任契約:判断能力がある間の事務支援
  • 遺言書:死亡後の財産承継と遺言執行
  • 死後事務委任契約:葬儀、納骨、住居の明渡し等の死後事務

すべての契約が必要とは限りません。配偶者や子の有無、財産、住まい、介護方針、死後の希望を整理し、必要なものだけを組み合わせます。

不動産がある場合に代理権目録へ検討したい事項

自宅、空き家、賃貸物件、共有不動産がある場合は、将来どのような事務が必要になるかを具体的に想定します。

  • 固定資産税、保険料、管理費等の支払い
  • 賃貸借契約の締結・更新・解約
  • 家賃の受領、滞納対応、管理会社との契約
  • 通常修繕、設備交換、大規模修繕
  • 境界、測量、越境等への対応
  • 借入金の返済と金融機関との連絡
  • 自宅売却、施設費確保のための処分
  • 売却代金の管理と税務申告への対応

代理権を広くすれば便利とは限りません。本人が保有を望む自宅まで自由に売却できる内容にするのか、一定条件や家族への相談手順を定めるのかを検討します。

また、権限があっても、実際の不動産取引では本人の利益、適正価格、税金、登記、買主・金融機関の確認等が必要です。

契約後の見直しと発動管理

任意後見契約は作成して終わりではありません。

契約から数年たつと、本人や受任者の住所・健康、家族関係、所有不動産、預貯金、介護希望が変わることがあります。少なくとも定期的に次の事項を確認しましょう。

  1. 本人と受任者が連絡を取れているか
  2. 財産目録と収支が更新されているか
  3. 不動産の管理・修繕状況が変わっていないか
  4. 本人の判断能力低下の兆候を誰が確認するか
  5. 監督人選任の申立てを誰が行うか
  6. 受任者が職務を継続できるか
  7. 遺言書等との内容に矛盾がないか

受任者が遠方へ転居した、死亡した、健康上対応できないといった事態も想定し、契約の見直しが必要か公証人や専門家へ相談します。

任意後見契約を検討する実務手順

  1. 本人の希望する生活、介護、医療、住まいを確認する
  2. 預貯金、不動産、保険、負債等の財産目録を作る
  3. 将来必要となる代理事務を洗い出す
  4. 親族・専門職等の受任者候補を比較する
  5. 報酬、実費、報告方法、利益相反への対応を決める
  6. 財産管理等委任契約や見守りの必要性を確認する
  7. 遺言書、死後事務等との役割分担を確認する
  8. 公証人と内容・必要資料を打ち合わせる
  9. 任意後見契約公正証書を作成する
  10. 契約後も財産・生活状況と発動時期を定期確認する

まとめ|契約書より「誰がいつ動くか」を決める

任意後見契約は、判断能力があるうちに将来の支援者と代理権の内容を自分で決められる制度です。

一方、公正証書を作成しただけでは任意後見契約の効力は生じず、判断能力低下後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて開始します。また、任意後見人には取消権がなく、契約前後の空白期間や死後の財産承継は別の仕組みで補う必要があります。

船橋・津田沼相続相談センターでは、代表の高原が、特定行政書士として本人の希望、家族関係、財産内容や任意後見契約に必要な事項を整理し、必要に応じて公証人、税理士・司法書士等の専門家と連携して対応します。

また、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、CPM(米国不動産経営管理士)、CCIM(米国不動産投資顧問)としての専門知識と、不動産会社経営および相続・不動産コンサルティングの実務経験を生かして対応します。単に現在の市場価格を査定するだけでなく、CPM・CCIMの知識と分析手法を用いて、本人の生活資金、賃貸収益、キャッシュフロー、修繕・管理負担、将来の売却可能性などを分析し、保有、活用、資産の組み換え、売却の各選択肢を総合的に比較します。

船橋市、習志野市、千葉市周辺で、任意後見契約や不動産を含む認知症対策をお考えの方は、判断能力が十分なうちに、契約内容だけでなく開始後の運用まで整理してみてはいかがでしょうか。

※本記事は一般的な制度と検討方法を説明するものです。任意後見監督人の選任等は家庭裁判所、任意後見契約公正証書は公証人、登記は司法書士・法務局、税務は税理士・税務署、紛争や個別の法律判断は弁護士へご確認ください。

参考資料