「遺言書を書いて自宅に保管しているが、家族が見つけられるだろうか」
「自宅と賃貸物件を、どのように遺言書へ書けばよいのか」
このような不安に対応する方法の一つが、自筆証書遺言書保管制度です。自分で作成した遺言書を法務局に預けることで、紛失、隠匿、改ざんなどのリスクを抑えられます。
ただし、法務局に預ければ遺言内容まで適切になるわけではありません。特に不動産がある場合は、物件を正確に特定するだけでなく、誰が管理するのか、収益や修繕費をどう考えるのか、預貯金とのバランスは取れているかまで確認することが重要です。
自筆証書遺言書保管制度とは

自筆証書遺言書保管制度は、自筆証書遺言の原本と画像データを法務局で保管する制度です。
法務省によると、申請時には民法上の形式に適合しているか外形的な確認が行われ、原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは同150年間保管されます。また、この制度で保管された遺言書は、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要です。
自宅保管と比べ、次のような利点があります。
- 紛失や廃棄を防ぎやすい
- 相続人による隠匿や改ざんのリスクを抑えられる
- 相続開始後の検認が不要になる
- 一定の条件で、相続人等へ遺言書が保管されていることを通知できる
一方、法務局は遺言内容の相談には応じず、保管された遺言の法的有効性を保証するものでもありません。形式面の保管制度と、内容面の設計は分けて考える必要があります。
自筆証書遺言の書き方と財産目録
自筆証書遺言は、原則として遺言者が本文、日付、氏名を自書し、押印して作成します。
ただし財産目録は例外です。財産目録はパソコンで作成したり、不動産の登記事項証明書や預金通帳のコピーを添付したりする方法も認められています。自書でない財産目録を付ける場合は、その各ページに署名・押印が必要です。
不動産を遺言書に記載するときは、「船橋市の自宅」「○○駅近くのアパート」といった通称だけでは、対象を一意に特定できないおそれがあります。登記事項証明書を確認し、土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積など、登記上の表示に沿って整理するのが基本です。
マンションでは、専有部分だけでなく敷地権の表示も確認します。共有不動産の場合は、自分が所有する持分を正確に把握しておく必要があります。
登記内容と現況が異なる、未登記建物がある、境界が不明、相続登記が済んでいないなどの問題がある場合は、遺言作成とは別に司法書士、土地家屋調査士、法務局等へ確認してください。
保管申請の流れ
1.遺言書と財産目録を作成する
最初に、相続人、財産、債務、遺したい相手を整理し、遺言本文と必要な財産目録を作成します。法務局所定の用紙上の注意事項にも合わせる必要があります。
2.申請する遺言書保管所を決める
保管申請先は、遺言者の住所地、本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所から選べ、申請できるのは遺言者本人に限られます。ただし、2通目以降を追加で保管する場合は、最初に申請した保管所へ申請します。
船橋市、習志野市、千葉市に住所、本籍または所有不動産がある方は、申請前に千葉地方法務局管内の遺言書保管所と管轄を確認しましょう。
3.申請書を作成して予約する
保管申請には所定の申請書が必要です。来庁手続きは予約制ですので、書類を準備したうえで予約します。
4.遺言者本人が法務局へ行く
保管申請ができるのは遺言者本人だけで、代理人や郵送による申請はできません。本人確認書類や本籍・筆頭者の記載がある住民票の写しなど、必要書類を事前に確認しましょう。
5.手数料を納めて保管証を受け取る
遺言書の保管申請手数料は、遺言書1通につき3,900円です。
手続き後に交付される保管証には保管番号が記載されます。再発行されないため大切に保管し、信頼できる家族や遺言執行者に保管制度を利用したことを伝えておくと安心です。
通知制度も忘れずに検討する
遺言書を預けても、相続開始後に誰もその存在に気づかなければ、手続きが遅れる可能性があります。
保管制度には「関係遺言書保管通知」と「指定者通知」があります。指定者通知は、法務局が遺言者の死亡を確認した際に、あらかじめ指定した人へ遺言書が保管されている旨を知らせる制度です。指定者通知の対象者は3名まで指定できます。
通知先の氏名や住所が変わった場合は、変更の届出も必要です。遺言書を作った時点で終わりにせず、家族構成、財産、住所等の変化に応じて見直しましょう。
不動産がある人が遺言作成前に確認したい5つのこと
1.相続税評価額だけでなく市場価格も確認する
遺産分割の公平性を考えるとき、相続税評価額だけでは実際の経済価値を把握できないことがあります。
例えば、評価額が近い二つの不動産でも、売却できる価格、賃料収入、空室率、修繕の必要性が異なれば、相続後の負担と手取りは大きく変わります。
2.収益性と管理負担を確認する
賃貸物件を引き継ぐ人は、家賃だけでなく、固定資産税、管理費、修繕費、空室、借入金返済を負担します。
「価値の高い不動産を遺す」という意図でも、相続人が遠方に住んでいる、管理経験がない、多額の修繕が迫っているといった場合には、負担を残すことになりかねません。
3.共有を安易に増やさない
一つの不動産を複数人へ共有で相続させると、一見公平に見えます。しかし、将来の売却、建替え、大規模修繕、賃貸条件の変更などで意見調整が必要になり、次の相続で共有者がさらに増える可能性もあります。
共有が適切な場合もありますが、代償金、預貯金、他の不動産との組合せにより、単独所有に近づけられないかも比較しましょう。
4.遺留分と納税資金を確認する
特定の相続人へ不動産を集中させる遺言では、他の相続人の遺留分や、相続税を支払う現金が不足しないかを検討する必要があります。
遺留分の法律判断は弁護士、相続税額・納税資金・特例の税務判断は税理士へ確認してください。
5.保有・活用・組み換え・売却を比較する
遺言を作る前に不動産をすべて売却する必要はありません。思い入れのある自宅は残し、収益性の低い賃貸物件だけ改善する、管理負担の大きい土地を別の資産へ組み換える、納税資金の不足分だけ売却で準備するなど、複数の選択肢があります。
大切なのは、売却ありきにせず、家族の希望、資産全体の構成、市場価格、収益性、税負担、管理負担を一覧にして比較することです。
自筆証書遺言・法務局保管・公正証書遺言の選び方
法務局の保管制度は、自筆証書遺言の紛失等を防ぎ、検認を不要にする点で有用です。ただし、法務局が内容を設計したり、有効性を保証したりする制度ではありません。
財産や家族関係が比較的単純で、自分で本文を書ける方には利用しやすい選択肢です。一方、複数の不動産、会社株式、家族関係の複雑さ、遺留分への配慮、遺言執行上の難しさがある場合は、公正証書遺言も含めて比較した方がよいでしょう。
どの方式を選ぶ場合も、先に財産診断を行い、「誰に何を遺すか」だけでなく、「受け取った後に維持・管理できるか」まで検討することが大切です。
まとめ|遺言書の保管と財産設計は別々に確認する
自筆証書遺言書保管制度を利用すると、遺言書の紛失、隠匿、改ざんのリスクを抑え、相続開始後の検認も不要になります。保管申請手数料は1通3,900円で、本人が予約のうえ法務局へ出向いて申請します。
ただし、保管制度は遺言内容の妥当性や法的有効性を保証するものではありません。不動産がある方は、次の事項を併せて確認しましょう。
- 登記上の表示と持分を正確に記載できているか
- 相続税評価額と市場価格に差がないか
- 収益性、修繕費、空室、管理負担はどうか
- 不動産を受け取る人が維持・管理できるか
- 他の相続人の遺留分や納税資金に問題がないか
- 保有、活用、組み換え、売却のどれが家族の希望に合うか
船橋・津田沼相続相談センターでは、代表が特定行政書士として相続人・財産関係と遺言作成に必要な事項を整理し、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、相続・不動産コンサルティングおよび不動産会社経営の実務経験を生かして、不動産の市場価格、収益性、管理負担も確認します。
遺言書だけを先に作るのではなく、ご家族の希望と資産全体のバランスを踏まえ、保有・活用・資産の組み換え・売却を中立的に比較します。必要に応じて、弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士等と連携して進めます。
船橋市、習志野市、千葉市周辺で、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶか、不動産を誰にどのように遺すかお悩みの方は、まず相続人と財産の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は一般的な制度と検討方法を説明するものです。遺言の有効性、遺留分、紛争等の法律判断は弁護士、相続税・贈与税等の税務判断は税理士・税務署、不動産登記は司法書士・法務局、表示登記や境界は土地家屋調査士へご確認ください。
参考資料
- 「01 遺言書保管制度とは?」法務省、https://www.moj.go.jp/MINJI/01.html (確認日:2026年8月22日)
- 「02 遺言者の手続」法務省、https://www.moj.go.jp/MINJI/02.html (確認日:2026年8月22日)
- 「03 遺言書の様式等についての注意事項」法務省、https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html (確認日:2026年8月22日)
- 「09 手数料」法務省、https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html (確認日:2026年8月22日)
- 「10 通知」法務省、https://www.moj.go.jp/MINJI/10.html (確認日:2026年8月22日)
